2012年6月30日

情報は誰のもの

放射能予測、情報公開自治体に差

 2012年06月26日(朝日福井)
滋賀県が独自に作製した、福井県内の原発で事故が起きた際の放射性物質の拡散予測図について、福井県は情報公開請求で滋賀県の部分だけを公開し、ほかを黒く塗りつぶして公開した。請求した市民らは、県の決定を不服として異議を申し立てている。
 滋賀県は福島第一原発の事故を受けて、地域防災計画の見直しのために、福井県内の原発で福島並みの事故が起きた場合、放射性ヨウ素がどのように拡散するかを予測した図を作製。昨年11月に詳細を公表した。同時に、影響がある近隣の複数府県に情報を提供していた。
 市民団体「サヨナラ原発福井ネットワーク」の山崎隆敏さん(63)と、「市民オンブズマン福井」の観正一さん(79)は、県内への影響に ついて県に情報公開を請求したが、県は今月中旬、「滋賀県と福井県が行う防災対策の事務に関する情報で、公にすると適正な事務遂行に支障を及ぼす恐れがあ る」として、滋賀県のほかはすべて黒塗りにして非開示にした。
 2人は6月中旬、決定を不服として県に異議申し立てをした。観さんは「支障を及ぼす恐れというのは、県の勝手な言い分。住民が情報を得ていないと、いざというときに正しい判断ができない」と憤る。
 さらに市民を混乱させるのは、同じ情報なのに、自治体によって対応が違うことだ。
 大阪府は今年3月、府内への影響を公表した。これを受けて、環境団体グリーンピース・ジャパン(東京)は、滋賀県から情報提供を受けたとされる京都、岐阜、福井、兵庫、三重の各府県に、各自治体への影響が分かるデータの公開を求めた。
 京都と岐阜は「非開示にする事由がない」として開示したが、福井、兵庫、三重の3県はこれに応じなかった。非開示の理由は、兵庫は「精査 度の不詳な予測結果で、県民に混乱を生じさせる恐れがある。県独自の拡散予測も検討している」。三重は「独自のシミュレーションではないから」とした。
 情報公開制度に詳しい折田泰宏弁護士(京都府)は「情報公開条例の内容はいずれの自治体もほぼ同じと考えていいが、運用は自治体の裁量に なっているのが現実」と指摘する。今回の情報については「いくつかの条例を見る限り、非公開に該当する事由は見当たらない。裁判所に申し立てれば、非公開 決定が取り消されるような情報だと考えられる」と話した。(山田理恵)

0 件のコメント: